小学生の時に憧れていた職業がありました。
それは、『考古学者』です。
映画インディージョーンズに影響を受けたという単純な理由。
テーテテッテー♪テテテー♪ テーテテッテー♪テテテンテンテン♪
あの音楽は今でも頭に焼き付いている。
中学生になっても考古学に興味があったのだが、3歳上のリアリストの兄貴に「考古学者なんて、ひと握りの人しか稼げないぞ」という一言で夢は打ち砕かれた。
高校の授業では、いつもツルんでいた友達たちが日本史を選択しているのに、「俺、世界史好きなんだよね」と世界史を選択した。
得意教科になりそうだと思っていたのに、ヨーロッパの歴史で長いカタカナを覚えなければならないことに嫌気が差し、常に平均点以下の教科となった。そして、考古学者を選択しなくて良かったと痛感した時でもあった。
しかし、頭の片隅には興味があり、たまにはYouTubeで世界の歴史などを視聴している。
ってことで、神話の国ギリシャへ行ってきました。
歴史と哲学の国、美しいエーゲ海と綺麗な街並み・・・
そんなイメージで訪れたのですが、
“神話の国 × カオスな現実” という、ギャップ満載の場所でした。
少年時代の憧れだった“文明の源流”に、46歳になって足を踏み入れることになるとは。
当時の自分に教えてやりたい。「お前の人生、意外と面白いぞ」と。
■歴史 × 現代 × 異文化
アテネの街はとにかくカオスです。
至る所に遺跡が点在しており、石畳の雰囲気ある街並み。
パルテノン神殿。ディオニュソス劇場。古代アゴラ。オリンピア・ゼウス神殿。リュカベトスの丘。など。
古代都市と近代都市が融合している。
車は国内で製造していないので全て輸入車。
日本、韓国、ドイツの車が多く「車の万国博覧会」みたいになっている。
トラムという連結バスの路面電車も走っている。
地下鉄もどこまで乗ったかという乗車距離制ではなく時間制。90分乗り放題みたいな感じ。24時間など複数の料金設定。どちらも電力なので、さすがEU圏のエネルギー政策だなと実感。
衛生面では、日本人には厳しい環境です。
街は少し荒れていて、ゴミが散乱しており、そこら辺で紙タバコ吸っている。
「水道水を口に含むとお腹を壊す可能性があるから気をつけてください」と添乗員さんから注意を受けていたので、お店でドリンクをオーダーした時には氷を抜いてもらったり、水で洗ったであろう生野菜やカットフルーツは食べず、歯磨きで口を濯ぐ時もミネラルウォーターを使用していた。シャワーを浴びる時も口の中にお湯が入らないように気をつけていた。
しかし、販売しているミネラルウォーターが硬水なので、そもそも日本人のお腹には合わず。
トイレの紙は流せないので、ウンチした時に拭いた紙はゴミ箱へポイ。つい癖で、便器に紙を落としてしまう。水を流しても紙は流れないので、持参していった割り箸で回収する作業を何度か体験。
コンビニは存在せず、日本の駅内にあるキオスク風の売店みたいな個人店舗がズラリ。
都市部のアテネだからか、物価は日本と同等か少し安い感じ。地方に行けば、かなり物価は安そうな気がする。
財政破綻の影響で、年金は下げられ公務員は減らされ税金は上げられというハードモードのギリシャ。
一部の必需品には軽減税率が課せられていますが、基本の消費税は24%。チップ文化もある。
料理は、、、薄味か大味。全てが美味しいわけではない(笑)
やはり現場に行って体感しないとわからないことだらけ。
そして、日本の”あたりまえ”が、世界基準では”どれだけ異常値か”思い知らされた。
■オスマン帝国
現地在住のガイドさんが何度も言っていた。
「我々ギリシャ人は、オスマン帝国に400年支配されていた…」
実は、ギリシャは独立して200年ほどしか経っていない国で、長い支配の記憶がずっと残されている。
14世紀末から15世紀にかけて、オスマン帝国がバルカン半島に進出し
1453年のコンスタンティノープル陥落後、ギリシャ本土のほぼ全域がオスマン帝国領となりました。
この支配は「トルコ・クラティア」と呼ばれ、1821年にギリシャ独立戦争が始まり、1830年に独立が承認され、約400年の統治が終了した。
島国の日本には馴染みないですが、陸続きの大陸では統治する民族が変わる。
ギリシャ人の心に深く刻まれている歴史である。
■宗教の背景
キリスト教が、世界最大の宗教であることは有名ですが、キリスト教が三大宗派に分かれていることはご存知でしょうか?『カトリック』『プロテスタント』『正教会』の三大宗派です。
キリスト教は1054年に東西に分裂しました。
位置的には、東側がトルコのコンスタンティノープル。西側がイタリアのローマ。
東側が『正教会』、西側が『カトリック』となり
さらに、16世紀の宗教改革で『カトリック』から『プロテスタント』が分離した。
ギリシャ正教は、東方教会の伝統を継ぐ『正教会』の主要な一部である。
添乗員さんに日本人が「キリスト教」と話すと「ギリシャ正教ね」と何度も言い返していた。
『ギリシャ正教をキリスト教の一括りにしないでくれ』という、信仰していることへ誇りを持っているのが伺えた。
■メテオラ
ギリシャで一番記憶に残ったのは、メテオラ。
巨大な岩山の上に修道院が建っている、ギリシャ有数の絶景スポット。
景観はとても雄大で美しかったが、こちらも歴史がある。
9世紀頃から、修道士たちがメテオラの奇岩の洞窟や裂け目に単独で住み、俗世を離れた瞑想と祈りに専念していた。この時期は戦乱もなく、孤高の隠遁生活が主流であった。
しかし、1340年代頃にセルビア王国のテッサリア侵攻により、修道士たちがメテオラに逃れてきました。
多くの修道士たちが集まったことにより、修道院を創立して、単独修行から集団での礼拝・労働・規律生活へ移行。
そして、先ほどのオスマン帝国による統治に繋がる。
政治的権力は制限されましたが、同じ『正教会』を信仰していたことにより宗教は保持され、文化的・宗教的中心地として発展したのがメテオラです。
メテオラの修道院は、崖の上に建設されており、幻想的な景色として有名です。
神に近づく象徴として天に近い場所を選び、断崖絶壁が精神的な孤立を促し
奇岩の頂上は自然の要塞として、外部脅威から身を守る防衛目的としても機能していた。
どのように建設したのか?とても不思議である。
食糧も物資もロープで引き上げる生活をしており、現実にこんな場所があったのかと衝撃を受けた。
「ここにいた修道士たちは、どんな気持ちで空を見ていたんだろう」
そう思わずにはいられないほど、世間から孤立していた場所であった。
撮影禁止の建物内を見学させてくれたのだが、死後の世界観というのは独特である。
壁画に死後の世界が描かれていたのだが、生きている世界と死後の世界を大きな川が隔ており
死後の世界には、裁判官がいて、生きていた時の”罪と得”について裁くのである。
日本の三途の川と似てる部分もあるなと思い
「人は死後に何を求めるんだろう?」と考えてしまった。
異次元空間のメテオラ。
この地を訪れた日本人はどれくらいいるのだろうか。
■誰が考えたの?ギリシャ神話(笑)
神々が超ブッ飛んでいるエピソードがギリシャ神話の魅力だと思う。
ホメロスの叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』の二大作品が有名だが、個人的には最高神ゼウス推し。
ゼウスは最初の妻として知恵の女神メティスと結婚したが、ある予言を信じ妻を飲み込んでしまう(笑)
2番目に正義と法の女神テミスと結婚したのだが、守護女神ヘラの美しさに魅せられ、カッコウに変身して求愛しまくる。ヘラは「愛人じゃ嫌よ」と正式な結婚を要求し、テミスとの離別後、正妻となりました。
ここからがゼウスの本領発揮。
ヘラに隠れてコソコソと浮気を繰り返す。
何かに変身する方法で味を占めたのか、レダという女性には白鳥姿で近づき、エウロパという女性には白い牡牛に変身して猛烈アプローチ。一昔前の芸能人が、段ボールで姿を隠してマンション潜入みたいです。
しか~し!
妻のヘラにバレまくります。むしろバレてもいいと思ってるだろ。
ヘラは結婚・家庭・出産を守護する女神で、貞淑な妻の鑑として崇拝されました。
その旦那が、ハチャメチャゼウスですからね。
そんなダメ旦那の妻ヘラさん。
嫉妬深いを通り越して激怒も通り越して、仕返しエピソードがとても貞淑な妻とは思えない。
愛人イオを牛に変えたり、セメレという女性を雷で死なせたり、アルクメネとの間に誕生した赤子に毒蛇を送り殺そうとしたり。ゼウスの浮気相手や子らに嫉妬し、苛烈な罰を与えまくります。ですが、その怒りゼウスに向けてくれよ。
ちなみに、レトという女性をデロス島に追いやる神話もあるのですが、デロス島には数々の神殿やライオンの像など古代の街並みが残っており、現在は世界遺産の無人島となっています。
日本神話でも、神々が浮気や多妻的な関係をもつエピソードが多く、国造りの神とされている出雲大社の大国主命(オオクニヌシ)も複数の女性と恋に落ち、浮気性として知られます。まさに日本版ゼウス。
また、嵐&海の神であるスサノオは、大蛇ヤマタノオロチ退治の英雄として有名ですが、ギリシャ神話のヘラクレスもヒュドラという大蛇を退治した英雄として語り継がれています。
日本神話とギリシャ神話で、共通点が多い。
いったい、誰が考えたエピソードなのでしょうか。
■エーゲ海と島々
ギリシャに訪れたら、エーゲ海クルーズは間違いなくオススメ。
白い建物の港町と海の青さに心が洗われる。
クルーズ船に乗れば心地よい海風を感じ、島々を見渡しながら進んで行く。
訪れたのは3つの島。
移動手段はロバだけ(車もバイクも禁止)のイドラ島。
白い時計台がシンボルの映画「魔女の宅急便」のような港町ポロス島。
ピスタチオの産地として有名で、紀元前5世紀のアフェア神殿や美しい修道院があるエギナ島。
文明から切り離されていて、のんびりとした時間が過ぎていく。
『いろんな人がいて、こんなスピード感で暮らしている場所もあるんだな』と。
時代の変化が激しい世の中で
”何を軸に生きるのか?”
考えさせられる時間であった。
■英語の必要性
今回の旅はツアーで行くので、以前のように事前に英会話を勉強しなかった。
会話する場面がきたら、今までやった積み重ねでどうにかなるかと安易な考えでいたが、やはり英語の必要性を痛感した。
話すことよりもヒアリングがとても苦戦した。ヒアリングできないと会話が成り立たない。
翻訳機能や外国語解読アプリなどもあるが、ある程度コミュニケーションが取れないと表情を見ながらの会話という楽しみが得られない。お店で何気ない会話でも、お互い笑顔で会話するために最低限のスキルは必要だ。
海外に行く時は、事前に英語を勉強すると心に誓った。
■ギリシャを訪れて
”自分は旅が好きだ”ということを知ることができた。
そして、今の年齢だからこそ”旅の楽しみ方”がある。
動き回れる体力があり、いろんなモノを見てきて、いろんなコトを経験したことにより
異文化、歴史、経済、産業、現地の人々、生活様式、思想や考え方、国、日本について、など
自分が何について、どのように感じて、何を考えるのか。
古代ギリシャのアテネ出身の哲学者ソクラテスは「無知の知」を説いている。
偶然なのか必然なのか、この感覚に気づけた場所は、ギリシャであった。
いろんなことを『知る』ことができる”旅”は、実に面白い。
”無知”というのは楽しいことである。
さて、文明の源流をもう少し遡ってみよう。
次の国エジプトへ。