孤高

Business

「経営者は孤独」とよく言われます。
私が知っている経営者の一風変わった”孤独”について。

彼は50歳くらい。ずっと独身。
経営者&独身ということで、片足どころか両足突っ込んで“リアル孤独”を体現しているような存在です。
この時点で『変わった人なんだろうな~』と思うかもしれませんが、実際は”とっても変わって”います。

見た目は年齢より若く、ガッチリ体型で、声もでかい。
毎回、坊主頭にタオルを巻いて、超超ロングのニッカポッカ姿でお会いするので
戦国時代の足軽か!ってくらいキャラが立っています。

話してみると、とても気さくで朗らかな人。そして、人情味にあふれている。
そんな彼(Aさんと呼びます)のエピソードをいくつかご紹介しましょう。

Aさんはもともと“一人親方”の内装職人。現場仕事をメインとする個人事業主でした。
ところが、仕事を振ってくれていた社長Bさんが突然会社を閉鎖することになり、こう言われます。
「オマエ会社作って、自分の代わりにみんなまとめてくれ・・・」
Bさんの会社は、Aさんのような多数の下請け業者を抱えていました。
その人たちの生活もあるので、きっと人望があるAさんに託したのだと思います。

急に振られたAさんは『独り身だし、最悪自分一人が責任かぶればいいや』と承諾し、会社を設立。

そこからの日々はガラリと激変。
会社設立から始まり、元請業者との交渉、請求書発行、入金管理、支払業務、その他諸々書類整理…
事務処理ゼロ経験から、いきなり社長業(笑)
「事務処理なんてやったことねぇ!」と嘆きつつも、持ち前の要領の良さであっという間にこなしてしまった。
ちなみに最終学歴は、偏差値40くらいの高卒です。

事務処理は嫌々やっていますが、本来の仕事はとても腕が立ち、3人必要な現場を1人でこなすのは日常茶飯事。
「相手もその方が原価かからないから助かるでしょ?」と言ってのけるが、
同業者や協力業者からは「まともに請求できなくなるから困るよ!」と苦情が出る始末。
だけど「サボってチンタラ仕事するのはできねぇんだよね」と自分の仕事に誇りを持ち、目の前の仕事に対して全力投球する“サボらない”を信条にしています。

こんなこともありました。
取引先の大手元請業者の担当者が、入社間もない若い社員に変更になった時です。
その若手社員は、前任者から担当変更時に1度だけ顔合わせをしており「前任からの引継ぎとなりますが、一生懸命やらせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします」という挨拶で、真面目でおとなしい印象だったようです。
後日、現場で仕事していたAさんの携帯に着信履歴があったので、その若手社員に折り返したら
「折り返しが遅い。見積もりが高い。工期が長すぎる。他の提出書類に不備がある。下請け業者をちゃんと管理してんのか?」など、ネチネチ長時間文句を言って『俺がオマエに仕事を出してやってんだぞ』感満載の対応だったそうな。。。
Aさん曰く、現場仕事を知らない高学歴で、会社の看板でイキっちゃっていたようです。
仕事に対してプライドもあり、真摯に対応しているAさんは「おめぇ、今から会社に行くから待ってろよ!」と、激おこぷんぷん丸で会社に乗り込み”現場職人さん達との付き合い方”について、しっかりレクチャーしてあげたようです。

そんな感じのAさんは、律儀にBさんから託された下請けさんをまとめていましたが、様々な諸問題が発生しまくったので「それぞれが自立して欲しい」と伝え、各自が独立するまで数年間フォローしました。

先代からの約束から解放されたAさんは、半年働いて半年遊ぶという豪快なライフスタイルへ変貌。

Aさんは、戦国時代~幕末時代が大好きで
長期休暇になるとハイエースで各地を巡り、戦場跡や城を訪ねてはボーッと風景を眺めていると、当時の雰囲気が伝わってくるらしい。川中島では「織田信長と武田信玄に語りかけたんだけどな~」と言っていた(笑)

山間部にある寺などにも訪れる。
その道中の素晴らしい渓谷に吊橋があり、引き寄せられるように車を停め歩いてみると、一人の若い男性がポツンと橋に佇んでいた。元気のない様子だったので声を掛けてみると「生きている意味を見出せない」とのこと。
Aさん曰く、口には出さないがきっと橋の上からダイブするつもりだったのかもしれない。と感じとった。
そんな人に対して「とりあえず話しするべ」と声を掛けて、持っていたタバコを分け与えて、近くの木に腰かけて話した。名古屋方面から来た人で「何をやってもうまくいかない」という若者にAさんは「んじゃ、来る道の途中にラーメン屋があったから腹減ってるなら食いに行こうぜ」と言い、車に乗せて腹いっぱい食べさせて、またお店の前でタバコを吸いながら今度はAさん自身の話しをして、最寄りの駅まで送って数万円渡し立ち去ったのだそう。
その行動の意味を聞いたところ
「世の中悪いことばかりじゃないし、家族だっているんだろうから会いに行けよ。と言ったよ」
「数万円渡せばその日に死ぬことはないだろう。使いたくなるだろうからな~」
「世の中には冷たいばかりの人じゃないんだと、思ってくれればいいよそれで。あとは知らないけど、俺はやることはやったよ」
って言っていた。渋すぎる。

他にも、
暑い日に地方の農道をハイエースで走っていたら、おばあちゃんが座り込んでいたので「だいじょうぶ?」って声を掛けたら、「ちょっと休んでるだけよ。よかったら麦茶でも飲んでいかない?」と逆ナンされ、近くのおばあちゃん家で麦茶を飲みながら世間話しをしたり
地方の名産が食べたいからと小料理屋に寄ったら、その場に居合わせた阪神タイガース好きのおじさんと意気投合し飯を奢ってあげたり
能登半島地震の災害支援で訪れた際には、作業開始になるとスーっと現場から消えて終わる頃に現れる、現場仕事をしたことないようなおじさん達に失望。災害支援で集まったというのに、日当&交通費&宿泊代が目当ての人達だったこと。さらに、復興支援の材料が国の資金から調達されるのだが、その材料が雨ざらしのところに置かれていたことに「材料を放置していたら劣化もするし、盗難もされるし、国はお金を出せばそれで終わりかい!」と、とても怒っていた。

そんな行く先々で”人情ドラマ”を量産しているAさんには、人生でやりたいことがあるらしい。
それは、、、”海外に行ってみたい”とのこと。
日本から出られない理由があるのかと思い「犯罪歴とかあるんですか?」って尋ねたら
「ねぇよ!!」と断固否定していた。

行ってみたいところは、南極とエジプトが候補らしい。
「人があまり訪れなくて、定住者がいない南極の世界を味わってみたい」
「ピラミッドを見てみたいけど、蛇が苦手なんだよね。エジプトに行ったら蛇にやられるかもしれないから命懸けだよ」
とても海外初心者が選ぶべき場所ではない。

予行練習として、なぜが”1週間誰とも話さない”ことを実行し、今度は「5日間くらい断食してみようかな」と言っていた。。。
「あとは、何すればいい?」って聞いていたので、「とりあえずパスポート取得してください」と伝えたら
「そっかぁ!パスポートがないと行けないんだよね!」と、真顔でメモしていた(笑)
 
 
経営者は孤独。独身は孤独。
そんなイメージは、あるかもしれません。
でもAさんを見ていると、その孤独は決して冷たいものではなく、むしろ人との関わりの中で温かく彩られている。

人間は一人で生きているようで、誰かと繋がっている。
人それぞれ、個性豊かな『人間味』を持っているからこそ、関わりの中でいろんな『味』を味わうことも楽しみの一つである。

さて、自分の『味』は、どうなんだろうか?
苦味強めの酸味&旨味が効いた『ブレンドコーヒー』としておきましょう。

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