『孫子の兵法』って聞いたことありますか?
2500年以上前の戦争についての古代中国の兵法書ですが、その内容は時代を超えて現代でも活用されている。
現代のビジネスや生活環境は、目まぐるしく変化し、以前の成功法則が突如として瓦解し、一気に市場の力学を塗り替え、生活様式も変わる。こんな混迷の時代において、古代の兵法書がシリコンバレーの起業家から企業戦略に至るまで、参考にされているんですよ。
要点を5つにまとめました。
① 戦わないのが最強
まずこれ。「戦わずして勝つのが最強」
これが一番有名で、超本質的な部分。
多くの人は「勝つこと」を目的とし、競合や相手を打ち負かすことに注力する。
しかし、ここに危うさの存在があることを指摘している。
「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」
なにを言っているかというと、リソースを一切損なうことなく目的を達成するという”全勝の概念”。
例えば、戦国時代の城を攻めた場合。
相手は、城に籠ってガチガチに守っている。
その状態の敵に、正門から突撃し真正面から戦いに挑めば味方の代償もでかい。
兵士は大量に死傷し、亡骸の片付けや追加の兵を募らなければならない。
勝ったとしても壊した城を使うなら、その改修資金も人も時間も必要。
そもそも「ここに攻めるのかよ〜。俺たちの命のこと何も考えてねぇじゃん。」という自軍の士気低下は計り知れない。
では、どうするのか?
・水や食料の補給を断つことに兵力を使い、奪ったら自軍に補給。
・同盟国がいるなら「勝利した後に〇〇あげるね」など、事前に根回ししておき第三者の介入をさせず孤立させる。
・降伏してくれたら、条件等を話し合う場を設けますよ。という選択権を敵に与える。
・敵に内通者を作り「降伏した方がいいんじゃないか」と、内側から士気を落とす。
攻め方はたくさんありますが、とにかく自軍の損害は極力少ない方法で、攻め落とすことに注力する。
このまま頑張って引き篭もってても何もならないですよ~。
飢えに苦しみ、家族や仲間を失うことはないですよ~。
それとも、バカ殿と心中して犬死に覚悟で戦いますか~?
このような、意味をなさない頑張りをしているというのを理解してもらう。
自分(バカ殿)の意地や見栄だけのために、兵士や民に戦いや我慢をさせるのか?
自分(殿)よりも、兵士や民がなるべく危険にさらさないようにするのか?
どちらのリーダーの方が良いでしょうか。
お互いにとっての話し合いの結果、迅速な決着を迎えることができ、さらには「今日から我らは仲間だ」となれば、戦わずに兵士も民も優秀な幹部も増える。
それが理想だよね。それが、実は賢い戦い方なんじゃないの?ってことを孫子は言っているんです。
近年のビジネスシーンに例えると、
泥沼の価格競争や敵対的買収は、リソースを最も消耗させる最下策になりうるということ。
真に知的な戦略家は、戦場に立つ前に、市場のルールを書き換え、協力関係を構築することで「戦わずして屈服」させる。
逆に、”完膚なきまでに叩き潰す勝利への執着”が組織を破滅させるという逆説でもある。
「相手を真正面からコテンパンにしてやったぜ!」
周りからすれば滑稽なことで、振り回された側の労力は計り知れないし、遺恨は残るし、勝利した組織に属している人も『俺は凄いんだぜ』という勘違いを生む可能性もある。
素直さ。謙虚さ。は、何処へ。
仕事関係でも日常生活でも「この人ちょっと面倒だな…」って人、いますよね。
・相手の悪いところを見つけたらそこだけを責め続ける
・納得いかないから自分の気持ちが収まるまで感情的に話す
・自分の主張だけを通そうとする
こんな感じでの対話は”無駄な消耗戦”でしかない。
時間も無駄。精神的に疲れる。そして、両者に遺恨が残る。
孫子的解釈をすると『戦わない』=関わり方を設計することとも捉えることができる。
無駄な戦場に立たないこと。
・必要最低限しか話さない
・距離感を保つ
・土俵に乗らない
以前のブログで「話しかけない&誘わない」スタイルを紹介したが、共通している。
ということで、本質的なことは『戦わずして勝つ』
では、残りの4つは流していきま~す。
② 完璧よりスピード
「完璧にやるより、さっさとやれ」
・誰からも指摘されない資料を完璧に作ろう
・100%準備してから動こう
・100点狙えるまでテストは受けない
⇒これじゃあ遅い。いつになったら動くの?
完璧と思われたい。失敗を指摘されたくない。自分の気が済む方法でやらせて。
誰基準なの?という問題。
物事を推し進めるためには、スピードもコストなのだ。
そして、世界はこちらがスタンダード。
iPhoneも発売してから修正&修正のアップデートしまくっています。
・とりあえずやる
・走りながら修正する
・一番に出す
「◯◯したい」って言ってるなら「まず動け!」とは『口だけ言ってても誰も信用しませんよ』ということ。
まず、何かに向かって”動いている”という成果を出さなければ、説得力もないし、周りの不満が静まることはないだろう。
孫子はこう説いている。
「久しくして利ある者は、未だこれ有らざるなり」
(戦争が長引いて国家に利益をもたらした例は、歴史上未だかつて一度もない)
③ 型にはまったら負け
同じやり方ずっと続ける人、いますよね。
・昔うまくいったやり方
・自分の成功体験
・マニュアル通り
でもそれ、相手側には全部読まれてる。
「こいつこう動くな」って分かるから対策される。
・状況によって変える。
・相手によって変える。
・環境によって変える。
これができる人は強い。
同じ戦略ではずっとは戦えない、敵や環境への柔軟性や適応力が必要となる。
相手の行動が手に取るように分かれば、後出しジャンケンほど強いものはない。
今例えるならAIだろう。
これだけ世が騒がれているのに、今のまま何も変化が起きない。AIに触れる機会を持たない。
と思っているのは昔の型にハマっている人。
柔軟性と適応力を保つには、アップデートし続けること。
さらに巧妙なのは『こちら側は後出しジャンケンをしてますよ』と相手に悟られていないこと。
④ 情報は“人”から取れ
「データも大事。でも最後は人間を見ろ」という話。
例1:人間関係
テキストだけ見ると、相手の状況がわからない。
メールやLINEだとよくありますよね。
でも実際会ってみると、
・それがその人の普通
・言葉足らずだった
・実は気を遣ってた&怒っていたなど
例2:業績
・売上減少
・粗利率悪化
・利益減少
・この商品は利益率が低い
・この社員は生産性が低い
これは“数値的結果”です。
でも、なぜそうなったか?実際に現場に行っていろんな声を聞くと、
・幹部同士がギスギス
・現場が不満だらけ
・若手が辞め定着しない
・値上げを怖がっている
・利益率低いけど、超重要顧客
・赤字だけど将来黒字に繋がる準備期間
・生産性低いけど組織の潤滑油となる人
とか普通にある。
つまり、数字は「結果」を表しているのであって「本質」は人間にある。
このような“数字になる前の原因”に着目することが重要。
ビッグデータやAIが全盛の時代にあって、アルゴリズムによる予測や『勘』や『憶測』のみに依存することは、本質とは相反する。『人間』に紐付くインテリジェンスこそが、戦略の精度を極限まで高めるのです。
⑤ 自分を理解してるか?
「敵を知るより、自分を知れ」
これ一番難しいやつ。
・自分の強み何?
・どこで戦うべき?
・どこで戦っちゃダメ?
例えば
・弱いのに正面から戦う
・不得意な土俵で勝負する
・リソースないのに拡大する
全て戦略ミス。
『勝てるところでしか戦わない』孫子の”全勝の概念”です。
この考え方は、個人だけではなく組織でも活用することができ
組織の不敗態勢を築くためには『五事』を提示しています。
道: 理念。組織全体が一体となっているか。
天: 時機。外部環境の変化を捉えているか。
地: 地勢。市場の特性を把握しているか。
将: リーダーシップの資質があるか。
法: 規律。管理体制が機能しているか。
孫子はこの5つのうち『道』を最優先に挙げています。
外の世界を分析するのも大切ですが、内なる鏡に照らして個人&組織の「不敗の態勢」を問うこと。
この徹底した自己客観視こそが、勝利の前提条件なのです。
■人は“戦うこと”に疲弊している
現代人って、戦い過ぎなんですよ。
・SNSで誰かに反論する
・会社で正論をぶつける
・気に入らない相手を論破する
・他人の価値観を否定する
・自分が正しいと証明し続ける
もちろん、正しいことを言っていることもある。
でも、『正しい』と『消耗しない』は別問題なんですよね。
特に厄介なのが、感情を軸に戦い始めること。
・分からせてやりたい
・謝らせたい
・認めさせたい
・見返したい
こうなると、勝負そのものが目的化する。
でも孫子は「長引く戦いに利益なし」とハッキリ言っている。
なぜなら、時間・体力・精神力を削られるから。
そして、相手を変えようとする戦いって、終わりがない。
無限疲労ループ発動です。
・無駄な人間関係
・終わらない対立
・見栄の張り合い
・承認欲求の戦争
こういうものにエネルギーを使い続けると、人生そのものが消耗戦になる。
勝つことより『削られないこと』の方が大事だと思いませんか。
本当に強い人って、感情で戦わない。
「そもそも無駄な戦場に立たない人」なんですよ。
・距離を取る
・必要以上に関わらない
・真正面からぶつからない
・勝てる場所でしか戦わない
これを“逃げ”と勘違いする人もいる。
でも実際は逆。感情で突っ込む方が簡単なんですよ。
本当に難しいのは「この戦い、意味ないな」と判断し、冷静に引くこと。
孫子の兵法って、戦争の本なんだけど、
実は“平和に生きるための本”でもあるんですよね。