エジプト

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さて、エジプト編に突入。
こちらは降り立つ前から”衝撃の地”であった。

青く澄んだナイル川と、黄金色の砂漠の中に静寂に佇むピラミッドという清廉な幻想を抱いていたが、
カイロ空港に近づき飛行機の窓から見えた景色を見て「えっ?ここに降りるの?」と驚いた。窓から街を見下ろすと見渡す限り茶色。火星の地表のような感じであった。

文明の源流は、神秘的で、どこか静かな雰囲気を想像していたが、、、
生存本能がむき出しの喧騒&混沌の世界であった。

■カイロとギザ
ナイル川を挟んで隣接しており、両都市を合わせて「大カイロ」と呼ばれる巨大都市を形成している。エジプトの総人口の2割が集中しており、アフリカ有数の人口密集地帯となっている。
人口が密集しているがインフラ整備が悪く、交通渋滞や大気汚染、プラスチック汚染、廃棄物処理問題、水資源の逼迫など、様々な都市問題を引き起こしており、2025年10月の”世界で最も汚染された都市ランキング”では残念ながらトップ10入りを果たしている。マジで現地は”ヤバイ”です。
ちなみに、他のトップ10を席巻しているのは、ほぼインドの都市である。カレー臭も考慮されてるのかな。ナマステ~♪

空港からはバスで移動していたのだが、道路は車両で埋め尽くされており、クラクションがあちこちで鳴らされている。日本では、むやみやたらにクラクションは鳴らさず『危ないよ~!』という自分よりも他人に配慮するために使用されるが、現地ガイドさんの話しによるとエジプトでのクラクションの使い方は『おいおい!俺はここにいるぞ!ここを通るぞ!』という意味で使われる。圧倒的自己主張型クラクションです。
海外ならではの車渋滞あるあるだが、とてつもない数のバイクも走行している。ノーヘル3人乗りは、スタンダードな世界。タバコを吸いながら爆走している奴もいる。
さらに驚愕なのが歩行者だ。小学生くらいの子供がいる家族や赤ちゃんを抱っこしているお母さんが、爆走しているバイクを避けながら横断歩道でもない3車線以上の道路を堂々と練り歩いている。

この地に降り立ってすぐに”日本の常識”が通用しない世界に来たなと腹を括った。

■生きることのリアル
ギリシャに引き続き水は危険。むしろエジプトの方がデンジャラスウォーター。
生野菜&カットフルーツNGはお馴染みのルール。もちろん歯磨きもうがいもミネラルウォーターがマスト。めんどくせぇ。
そもそも水道水をそのまま飲める国は、世界で10ヵ国らしい。日本アリガトウ。

レストランのテラス席で夕飯を食べていた時のこと。
なんと!野良猫がテーブルの上を駆け回り、食べ物を口にして去っていく。”お魚くわえたドラ猫~♪”状態である。現地ガイドからは「どんな病原菌を持っているかわからないから絶対触らないでください」と言われているので、なすがまま。あまり美味しくないご飯をペロペロされたり、獲られた人は、ご飯が強制終了される。残念でしかない。
道路脇や食べ物を売っている店の近くなどには、ヨダレを垂らした痩せこけた野良犬もウロウロしている。狂犬病の注射なんてしてないでしょ。。。
人間も動物も生きることに必死な世界である。

街中には、未完成のまま放置された赤茶色の煉瓦造りの家が目に付く。ガイドさんに理由を聞くと「完成させると税金が発生するからそのままですね~。」とのこと。意図的に屋根や最上階の一部を未完成の状態にしておき、税金の支払いを回避または延期するという方法だ。雨が降らない地域だからなせる業なのか。。。
屋根だけではなく、明らかに途中までしか造っていない家もある。こちらも理由を聞くと「銀行の住宅ローンの金利は約20%なので支払いが大変なんですよ~。借入限度額分だけの工事で止まっているんですよ~。また稼いだら追加でローンして、また続きを造るんですよ~。」
いや~キツイ。これはキツイでしょ!借入が3,000万円だった場合、利息が600万円ですからね!
『日本の常識』を嘲笑うかのような、したたかな経済的生存戦略が息づいている。

ハン・ハリーリ市場というエジプトの熱気が味わえる外国人向けのお土産通りを訪れた。
歩けば「カッコイイ!」「カワイイ娘!」「バザールでござーる!」「山本山!」「全部タダ!」と店主達が繰り出す片言の日本語は、単なる冷やかしではなく、彼らが外貨を掴み取るために必死に編み出した”生きる知恵”である。
もちろん商品に値札なんてのはついていない。「全部タダ!」と言ったくせに観光客は高値をふっかけられ、お互いが納得した金額が売買金額となる交渉スタイル。
これらを単なる”ぼったくり”とするのは容易だが、イスラム教の『喜捨』という精神構造が背景にある。『持てる者が持たざる者に分かち合う』というこの思想は、生き抜くための原始的な分配システムなのだ。

人間同士が剥き出しの欲望と本能でぶつかり合う世界観は、日本人には疲れるかもしれない。
逆を言えば、過剰なサービスと清潔さに飼い慣らされた我々が忘れてしまった”生存の熱量”そのものでもある。自己防衛の境界線を保ちつつ、この図々しいまでの生命力と渡り合うこと。それこそが、エジプトという地で『生きている実感』を享受するための作法といえる。

■ピラミッド
屈折ピラミッド、赤のピラミッド、階段ピラミッド
そして、ギザの3大ピラミッド&スフィンクスとピラミッド尽くしの旅。

現地に行って思ったことは、ピラミッドに積んである石は思ったほど大きくなかった。なので、トントンと登ってみたところ少し遠くから自動小銃を装備している警備の人がこっちに向かって叫んでいる。「えっ?えっ?」と耳を傾けると「DOWN! DOWN!」ってめっちゃ怒られた。後から知ったが、ピラミッドに登ることは禁止されている。

ピラミッドは灼熱の砂漠にある。ってことで、目を守るためにサングラスをしていたが、頭はノーガードであった。そんな観光客を見つけては、大量のスカーフを手にした現地の物売りが「2ドル~2ドル~」と言いながら近づいてくる。日よけ対策と旅の思い出に買うことにし、自分が気に入ったスカーフを指さすと「4ドル~4ドル~」と言った。「オイ!オイ!話しがちげ~じゃね~か」と思い交渉開始。自分も負けじと粘り「2ドル~2ドル~」と連呼し、2ドルで購入した。
エジプト都市部の平均月収は約5万円。1ドル155円で換算すると、2ドルのスカーフを約160本売らなければならない。原価を20%と仮定したら約200本を売らなければならない。
灼熱の砂漠で大量のスカーフを手にし、執拗に”売る”ことへの理由が垣間見えた。

エジプトに来た一番の目的!
クフ王のピラミッドに入れるとのことで、ウキウキしながら突入。。。
しかし、すぐに心が折れかけた。
窮屈で急勾配もある一本道をひたすら進んで行く。換気されていない空間でサウナ状態のように蒸し暑く息苦しい。途中に出口なんてものはないので、閉所恐怖症の人は絶対無理な空間だが、無神経な自分はここは余裕でクリア。
高い障壁となったのが、誰が悪いわけでもない”スメハラ問題”であった。強すぎる香水の香り、汗臭・体臭、加齢臭、口臭など、老若男女&多国籍の臭いの化学反応が少し吐き気がするほどヤバすぎた。。。
奥まで行く人と帰ってくる人が、譲りながら交差するほど窮屈で、全員びっちょり汗をかいている。
途中で断念して引き返す人もいるなか、臭いに耐え耐え耐え抜き、石棺がある部屋まで突き進んだ。
最深部は、少し広い空間にポツンと置いてある石棺と椅子に座っているおじいちゃん警備員がいるだけで、YouTubeで何度も見ていた神秘的な空間に対する思いよりも、最深部まで到達した達成感と異臭空間で淡々と仕事をこなす警備員への敬意の念が勝った。

無事外に出てピラミッドを目の当たりにし、なぜこんなモノを古い時代に造ったのか。
王の墓として、国家や権力の象徴のため、信仰のためなど様々な目的があるが、当時の人達の『本気』が、石となって残したことには変わりないだろう。

■大エジプト博物館
2025年11月『大エジプト博物館』がグランドオープンした。
単一文明を扱う博物館としては、世界最大級の規模を誇るこの施設は、今後の旅先として絶対的な人気を持つであろう。

「黄金のマスク」で有名なツタンカーメンは、長らく撮影禁止だったのだが、大エジプト博物館に移動してからは撮影解禁となり、一般の人が撮影できるようになった。浮遊するように展示されたガラスケースに飾られており、背面に刻まれたヒエログリフの「死者の書」まで観察できた。
約10万点の展示品の中で、一番の目玉となる黄金のマスクは大人気であった。

建物内の巨大なガラスの壁越しには、約2km先にギザの3大ピラミッドが見える。
展示品がかつて存在した「現場」と視覚的に接続される構造は、度肝を抜かれた。

実は、博物館の建設に日本が総額842億円を2回に分けて貸している。利息は、年利1.5%と1.4%。
エジプト国内の住宅ローンの金利は約20%ですよ~。
むしろ他国から借金をしているから、国内は高金利で貸して返済資金に充てているのか?
ちなみに入場料は、外国人観光客は約7,000円。日本人には是非、割引を適用してもらいたい。

ところで館内を歩いていると、エジプト人の若い女性に何度も「一緒に写真を撮ろう!」と声をかけられた。
数人のエジプトギャルに囲まれるのは良いが、顔認証システムの詐欺なのか?大人数に囲まれたら貴重品が盗られるんじゃないか?と心配をしたが、どうやら一緒に写真を撮っておしまいなのである。
エジプトギャルは日本人の中年オッサン好きなのかと思ったのだが、現地ガイドに聞いたところ「エジプトの田舎に住んでる子たちは日本人に会うことは滅多にないので、物珍しくて一緒に撮って家に帰って家族に見せているんですよ。修学旅行とかで来てる学生達でしょう。」と言っていた。まぁ、いいだろう♪

■宗教
イスラム教なのでモスクがあちこちに存在し、時折、スピーカーを通して大音量でアザーンという礼拝を呼びかける声が流れている。もちろん何を言っているか全くわからず、その大音量に圧倒される。
日本で例えると選挙カーの拡声器のようであるが、音量はその3倍~5倍ほどはある。

モスクに足を踏み入れると豪華絢爛な装飾で神聖な感じがしたが、ここも人々の「足の臭い」が強烈に立ち込めていた。
靴のまま入れないので、ビニール袋に靴を入れてモスクに入るのだが、絶対に床は清潔ではない。
裸足なんてのはもってのほかで、靴下でも嫌な感じがする。それを見越してか、観光客向けには靴下に被せる足用ビニール袋も売っていた。
観光客だけではなく現地の人も数多く訪れており、宗教が生活の身近な存在であることを感じた。

正直なところ、経済が発達しているわけでもなく、環境インフラも悪く、乏しい資源にサービス品質も悪い。日本人からするとお世辞にも良い国とは言えないし、暮らそうとも思わない。ましてや今は世界中の情報が知れる時代である。
厳しい環境では、人の心は荒れ果て秩序を保つことは難しい。今日生きることに全力であればあるほど、不安と向き合わなければならない。
そんな過酷な現実社会の治安を一定レベルで維持するために、宗教が役立つ一面を持っているのではないかと思った。

イスラム教は『六信五行』という教えがある。
6つの信じる心と5つの行動。

断食や1日5回の祈りなど、聞いたことある行動はあったが、それは形骸化した儀礼ではなく、日々の生活習慣として根付いていた。実際に、レストランの一角にはお祈りをする部屋があり、代わる代わる人がお祈りをするのを目の当たりにした。

日本古来から育まれてきた『礼儀作法』『思いやり』『おもてなし』は、とても崇高な精神であり、世界から賞賛されるのも頷けた。日本人としての”誇り”を感じることができた。

■エジプトを訪れて
エジプトは世界からこう評価されている。
『世界三大うざい国』と。

日本の常識はほとんど通用しなかったが、それでも、この国には確かに生きている感がある。
エジプトで感じた違和感や息苦しさなど、五感全て揺さぶられたあの感覚はとても良い刺激となり
そして、図々しいほどの剥き出しの生命力は、目を見張るモノがあった。

気がつけば、日本に戻り“ちゃんとした生活”に戻っている。
逆に、なぜこれだけ豊かな国なのに日本人は疲れているのか。

世界遺産に惹かれて、文明の源流に触れたつもりが、
考えさせられたのは『日本×生きること』という、自分の源流であった。

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